知らなかった世界

昨日、妻に誘われてライブに行ってきた。
妻が昔からファンのバンドで10年ぶりに復活したためのライブ、とのことだった。
ちなみに何のバンドかはもう言えない。なぜなら昨日のライブは3万人収納した挙げ句、それでもチケットを取れなかった人が音漏れを目的に1万人くらい集まる規模で、僕みたいに「誘われて」とか「とのことだった」みたいなスタンスのやつはボコボコにされるはずたからだ。
(いやでも、ライブに行くことが決まってからは毎日バンドの曲を聞いてたし、分からない曲がないくらいにはしたし……ブツブツ)


で、そのライブが凄かった。僕が知ってるどのライブとも違った。完全に知らない世界だった。
まず、ボーカルの人が「行くぞー!」とか言うと「うぉぉぉぉ!!」と怒号のようなレスポンス。会場で電車でも走ってるのかなって音。
一方、僕がよく行くceroのライブではそもそも「行くぞー!」とか言わない。「まぁ緩く楽しんでって下さい」とか言って、うちらも「わぁ」くらいなレスポンス。かわいい。昨日のライブが軍隊だとすると、何という家庭的なレスポンス。


で、曲が始まるとみんな手を上げる。しかも最初から終わりまでちゃんと。これまたceroと比べて恐縮だけど、僕らはたぶんそんなに手を上げてない。最初の方だけちょっと上げて、あとは基本的に腕組みしながら見ている。
昔、ceroのライブに妻を連れて行ったとき「なんでみんな手とか上げないで、仏頂面で見てるの?楽しくないの?」と聞かれたことがあって、「楽しいわ!ボケ!」って思ったけど、そんなことは言えないので、100倍くらい薄めて回答したことがあった。
なるほど、これを知ってたらそう思うかもしれない。


極めつけはモッシュ
僕の知ってるモッシュは最前列の人たちだけが押し合いへし合いするイメージだったんだのが、昨日は違った。
僕らの席は4階でスタンディングスペースをよく見渡せるところだった。ライブが盛り上がってくると、そのスペースの一部で人がいない箇所ができていることに気づく。それは円になり、直径10〜20メートルの大きさにだんだん広がっていく。その円を取り囲むように観客達が腕を組んで走っている。何言ってるか分からないと思うけど、でっかいカゴメカゴメみたいな奴。それが何個もできていて曲が最高に盛り上がったところで、真ん中に一気に人が戻っていく。っていう現象を何度も見た。
すごい。もうこれに至っては何でそんなことをするのか意味がわからない。危なくない?昨日、会場で2、3人の人が亡くなったって聞いても、そうかもな……って普通に受け入れられる。
これって普通なの?昨日のバンドが特殊なの?


てか、10年ぶりの復活でこの集客力。これが本当のスターなのかもしれないなって思った。
僕がよく見るヒップホップのPVではラッパーの人が金のチェーンを着け、周りに美女を侍らせて「おれはヒップホップの成功者。乗りこなすぜ高級車。フォアグラ食べ過ぎ糖尿だ(Lyric by のひた)」みたいなラップをしてるんだけど、本当の成功者は違った。
ライブの途中で「お前ら……静かにしてくれ……。外で音漏れを聞いてる奴ら……。ありがとうな」とか言ってた。感動的だ。僕の好きなラッパーの人は反省してほしい。


そんな熱いライブ。
ちなみに、僕の隣の席にプロレスラーみたいな男の人がいて「怖いな」って思ってたんだけど、始まると「ヤバイよヤバイよ」って泣いていた。たしかに10年ぶりに大好きだったものが帰ってきたらそうなるのかもしれない。周りの人、みんなそんな感じで、3万人くらいの人の感情が爆発していた。感情って集まると圧力あるってことを、初めて知った。たぶんちょっとした電気くらいならつけれたと思う。
そんな一瞬に素人ながら立ち会わせてもらったことは本当にありがたいことだし、かつ参加できなかった人たちに申し訳ない。
彼らのためにもバンドの人たちにはもっとライブをしてほしいなと思う。