妻をHIPHOPヘッズにしたい

昨日、本や映画の趣味について妻と分かり合えないって日記を書いたのだけれど、もう一個思い出した。妻と分かり合えないシリーズ第二弾。

 

まずはこちらを見てほしい。

音楽なしのラップから入り、お客さんを十分に煽ったところでビートが入る。お客さんも僕も興奮。フォー。
意外なことに僕はHIPHOPが好きだ。詳しいわけではないんだけどフローに身を委ねるのが好きだ。格好いいのでもう一回言いたい。フローに身を委ねるのが好きだ。
いつだったか、妻が寝ている横で上の動画を見ていた。「はぁ……格好いいな」ってウットリしていた。何だったら体も揺らしてたと思う。そんな中、妻が起きてきて曰う。「なんで朝からお経みたいな音で目を覚まされなくちゃけないの?」と。
本当に普通にびっくりした。「え?格好良くない?」と聞くと、「や、分からない……」とのこと。
このとき[自分にとって心地良いものが人にとっては必ずしもそうでもない]、[下手すると不快なときがある]っていう、文字にすると普通のことなんだけど、そんな当たり前なことをガツンと突きつけられた。
はー現実にこんなことがあるんだ……って驚いた。


そもそも妻は音楽をあまり聞かない。車の中でもラジオではなくTVをつけている。
昔は音楽を聞いていたみたいなんだけど、ギターをかき鳴らす系が好きなようだ。ロックっぽいの?かな?ごめんなさい、知識が無いから表現出来ないんだけど、みんな聞いたら「あ、これはロックだね」って言うと思う。
……あわない。僕はどちらかと言うと重低音がズカンズカンと来て欲しい思ってしまう。


人にはそれぞれ好きなものがある。
それは個人の趣味の話で、それを無理やりどうこうしようっていうのはナンセンスだろう。むしろ人に多様性があるからこそ、様々なものが生み出され、さらにまた誰か違う人がそれを好きになって世界は広がっていくのだろう。好きになるものの選択肢が多いことは素晴らしいことだ。「好き」で繋がっていく世界。本当に素敵なことだと思う。

 

ここまでは分かっている。分かっている上で言いたい。
妻をどうにかHIPHOP好きに出来ないだろうか?
みんな違うからこそ世界が広がるっていうのは分かる。美しい。
けど、本音を言えば「僕の趣味こそが最高で至高!他のものが好きなんて信じられない!みんな!僕の好きなものの話を聞いて!!それ以外は認めないいいいい!!」って、みんな思ってるんじゃなかろうか?僕はほんのちょっぴりそう思っている。ほんと、ちょっぴりよ?
僕が家で音楽をかけて、ふとした拍子に「あ、この音楽いいね」って言われたい。ただそれだけなんだ。


というわけで、僕は少し小細工をした。
ゴリゴリのラップとかだと、確かに受け入れるのに時間がかかるだろう。でも、スムースな、耳心地のいいやつなら、案外「へーラップって怖い曲かと思ったけど、こういう優しい感じのもあるんだ」ってなるかもしれない。
さらに言えばこれまで頑なな態度をとっていたから、もしかしたら素直にいいねって言うのが憚られるているのかもしれない。
この2つを勘案して、TVでYoutubeに繋げ(AmazonのFireTVで出来る!)、この曲をかけたまま「ちょっと用事が」と言って2時間くらい外に出てみた。 

 

どうだろう?この曲。夏の雨上がりのように爽やかな風を感じないだろうか?
そのとき妻はDSでゲームをしていたけど、この曲ならふとしたタイミングで「へー夫って、こんなのが好きなんだ……。ちょっと良いじゃん」って思ってくれるかもしれない。それにYoutubeなら似たような曲を探せる。ここから他の曲を探すかもしれない。ラップにハマっていき、いつかはHIPHOP好き(=ヘッズ)になってるかもしれない。

 

2時間後、僕はワクワクしながら帰ってきた。
TVは消されていた。
まぁね、2時間は長いし、色々と探してみた後かもしれない。TVをつけてYoutubeを繋げてみる。僕が家を出たタイミングで再生が止まってる。あ、僕が家を出てTVはすぐに消したのね。なるほど、なるほど。ゲームしてたしね。うん、うるさかったよね。ごめんごめん。
……ちくしょう!!


ここまでして、ようやく僕も気づいた。
良いじゃないか、好きなものが違っても、と。
やっぱり自分が好きなもの、人が好きなものは別で、それを無理やりあわせる必要はない。同じものが好きっていうのも良いことだけど、よくよく考えたら妻がゲームしてる横で音楽を聞く時間も好きだったりする。
そんな時間を大切にする生活を続けていければ良いんじゃないか。
いつかお互いの好きなものが交錯する瞬間を、少しだけ待ちわびて。